美ヶ原

「世界の天上が抜けたかと思う」と詩人尾崎喜八が歌った美ヶ原。広い頂上台地にある文字通り美しい名前の草原は、空がどこまでも広い天上の楽園です。電波塔の林立する王ケ頭の向こうには槍穂連峰から白馬に至る山並み、乗鞍、御岳、中央アルプス、後ろを振り返れば南アルプス、富士山、八ヶ岳、さらに浅間山等々、山々に囲まれた広い頂上を彷徨い歩くと、この秋の一日が幸せに感じるのです。

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美ヶ原に向かう途中、ラジオからモーツァルトの20番のピアノコンチェルトが流れてきました。アシュケナージ/ロンドン響の演奏で、後年のフィルハーモニアでの弾き振りによる演奏よりも若々しく、ピアノの音に芯があり、綺麗ですね。私は普段20番以降のピアノコンチェルトはあまり聴きません。もちろん素晴らしい作品ばかりですが、私には、短調であれ、長調であれ、これ以降の作品を聴くには少し覚悟が要ります。

もう20年以上も前、仕事でお世話になった人が若くして亡くなりました。小さい子供を残し、お葬式ではそれを見るのが辛く、秋の澄んだ青空に流れる雲を見つめていました。突然、この曲の第二楽章が頭の中に流れてきました。激しく、悲劇的な両端楽章に挟まれた不思議な明るさの第二楽章は、「結局、人生はこのようなものなのか・・」と私に語りかけているようでした。

帰りに寄った八島湿原や私の大好きな池のクルミは、もう秋色。あと何回この風景が見れるのか、音楽をどれほど聴けるのか、そんなことを想うのもこの季節ならではです。

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池のクルミと蓼科山