音楽家の対話

モーツァルトのピアノ協奏曲第9番「ジュノム」は、私の大好きな曲です。出だしからモーツァルトの音楽が満ち溢れ、明るく快活で、いたずらっぽく、少しセンチメンタルで、まるで周囲にいる仲間と戯れ、モーツァルトが楽しんでいるような音楽です。この大好きなピアノ協奏曲を久元祐子さんと、指揮者の伊藤翔さんのピアノによる素晴らしい演奏を山荘ホールで聴かせて頂きました。

2台のベーゼンドルファーの輝かしくも深い響き、お二人の演奏がモーツァルトの音楽を楽しみ、ピアノで親しく会話しているようで、素晴らしかったです。若々しいモーツァルトの音楽がホールに満ち溢れ、素晴らしい時間が過ぎて行きました。

その翌日、お二人はベートーヴェンのピアノソナタに向き合っておられました。久元さんは今年から8年かけてベートーヴェンのピアノソナタ全曲演奏会を行われますが、この秋から始まる演奏会の前に、お二人が楽譜の解釈についてお話されている貴重な場面を拝見させて頂きました。

ピアニストから見た楽譜の解釈と、指揮者から見た楽譜の解釈を其々の考えと弾き方を熱心に交わされています。どちらかが一方の考え方を押し付けるものではなく、こういう弾き方も有るのでは・・といったように、お互いが楽譜から読み取った考えを語り、それを双方が尊重しながら、新しい発見に驚いたり、相槌を打ったり・・、ベートーヴェンのピアノソナタの楽譜を挟み、素晴らしい演奏をするという目的のために、音楽家同士の対話が続いていきました。

気が付けば窓の外の森も少し暗くなり始めていました。ベートーヴェンの音楽に少しでも近づこうとする音楽家の熱い気持ちが伝わって来ると同時に、対話というものの意味を今一度考えさせられ、素晴らしい経験でした。

8年という長丁場、健康に留意され、無事完遂されることをお祈りしています。もっとも聴く方も相当の覚悟が要りますね(笑)。

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